ジョン・D・マクドナルド『夜の終り』 The End of the Night 1960
John Dann MacDonald(1916-86)
吉田誠一訳 創元推理文庫 1963.10
最初に置かれるのは、四人の犯人の絞首刑を執行した役人の自慢話だ。「大仕事だったぜ」。
死刑から始まるこの物語は、彼らの犯行の本体を巧みに先送りにする。この卓抜な語り口に作者の力量はいかんなく発揮されている。トルーマン・カポーティの『冷血』1966(新潮文庫)の先駆ともいえるし、マンソン・ファミリーによる猟奇殺人を予見したともいえよう。
マクドナルドはもう少し後に、『濃紺のさよなら』1963(早川書房HPB)に始まる、揉め事解決屋トラヴィス・マッギーのシリーズで人気を博する。他に、『呪われた者たち』1952(早川書房HPB)、『生き残った一人』1967(早川書房)、『コンドミニアム』1977(角川書店)、『ディベロッパー』1986(集英社)などのシリアス・タイプの作品がある。また初期に多作した短編のセレクションも見逃せない。