ジェイムズ・ヤッフェ「ママは何でも知っている」Mom Knows Best 1952 (Mom, The Detective 1968)
James Yaffe(1927-2017)
小尾扶佐訳 早川書房HPB1977.3 ハヤカワミステリ文庫2015.6
ヤッフェは、十五歳のとき初めて書いた短編が、クイーンの編集するEQMMに当選する、という経歴の持ち主。同じ「クイーンの定員」出身者のケメルマンより二十歳若いが、デビューは先だ。一種の神童だったといえよう。
ブロンクスのママ・シリーズを書き始めたのも、二十代の前半。こちらも安楽椅子探偵の短編シリーズだ。八編の短編集は日本語版のほうが先に発刊された。
毎週金曜日に、刑事の息子が妻同伴で食事に来て、事件の話を語る。五十年配の未亡人ママが推理の解決編を与えるというパターンの短編だ。息子は妻の前で子供あつかいされて居心地悪くなり、インテリ妻はママに対抗しようとして逆にやりこめられる。場面はすべて食卓で進行する。
安楽椅子というより食卓探偵の雰囲気だ。手作り料理の暖かさが推理の背後に流れ、コージー派の味わいも備えている。
二十年のインターバルをあけて、同じ主人公で長編が書き継がれ、四冊を数えている。
もう一人のEQMMの入選組は、ロバート・L・フィッシュ。第一作「アスコット・タイ事件」1960から、ホームズもののパロディを始めた。十二編が『シュロック・ホームズの冒険』1966として刊行された。計三十二編あり、三冊の短編集にまとめられている。