6-6 未来からさかのぼってみれば
ここでまとめたSF系3作。下書きはあるが、調整のため削除した。
ことのついでに復元しておく。
テリー・ビッソン『バーチュオシティ』Virtuosity 1995
Terry Bisson(1942-)
映画ノベライゼーション 鎌田三平訳(徳間文庫)1996.5
『バーチュオシティ』は、映画のノベライズだから、SF作家ビッソンの独自の世界を紹介するものではない。CGを多用したB級SF映画の設定のみをここで取り出すことになる。
一九九九年の未来社会(製作時期から少しだけ先に置かれた)。治安組織は、人工知能テクノロジーを大幅に採用して、ヴァーチャル・リアリティ・シミュレーターによる
犯人追跡訓練を行なっていた。訓練の材料には、凶悪な合成デジタル・マシーンが使用される。中でも最高レベルのシド6・7には、百八十三人の凶悪殺人鬼の人格データを埋めこまれた。
この最強の合成マシーンが現実世界に逃げ出して、悪事をほしいままにするというのがメイン・アイデア。主人公の捜査官にデンゼル・ワシントン、人間化したマシーンにラッセル・クロウという配役だった。デジタル・データがヒューマノイドの肉体を備えるという設定は呑みこみがたかったし、肉体化したマシーンがふたたびサイバースペ
ースに逃げこむというパターンもさらに不思議だった。コミックブック風だが、映画ならでは通用する話だろう。
一大ブームとなった『マトリックス』の源流をつくった一作とみなせる。