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2023-09-22

6-6 未来からさかのぼってみれば テリー・ビッソン『バーチュオシティ』

 6-6 未来からさかのぼってみれば

 ここでまとめたSF系3作。下書きはあるが、調整のため削除した。

 ことのついでに復元しておく。



テリー・ビッソン『バーチュオシティ』Virtuosity 1995

Terry Bisson(1942-)

 映画ノベライゼーション 鎌田三平訳(徳間文庫)1996.5

 『バーチュオシティ』は、映画のノベライズだから、SF作家ビッソンの独自の世界を紹介するものではない。CGを多用したB級SF映画の設定のみをここで取り出すことになる。

 一九九九年の未来社会(製作時期から少しだけ先に置かれた)。治安組織は、人工知能テクノロジーを大幅に採用して、ヴァーチャル・リアリティ・シミュレーターによる


犯人追跡訓練を行なっていた。訓練の材料には、凶悪な合成デジタル・マシーンが使用される。中でも最高レベルのシド6・7には、百八十三人の凶悪殺人鬼の人格データを埋めこまれた。

 この最強の合成マシーンが現実世界に逃げ出して、悪事をほしいままにするというのがメイン・アイデア。主人公の捜査官にデンゼル・ワシントン、人間化したマシーンにラッセル・クロウという配役だった。デジタル・データがヒューマノイドの肉体を備えるという設定は呑みこみがたかったし、肉体化したマシーンがふたたびサイバースペ


ースに逃げこむというパターンもさらに不思議だった。コミックブック風だが、映画ならでは通用する話だろう。

 一大ブームとなった『マトリックス』の源流をつくった一作とみなせる。


『アメリカを読むミステリ100冊』目次

イントロダクション 1 アメリカ小説の世紀  ――1920年代まで  1 偉大なアメリカ探偵の先駆け   ジャツク・フットレル『十三号独房の問題』1905   メルヴィル・D・ポースト『アンクル・アブナーの叡知』1918   シオドア・ドライサー『アメリカの悲劇』1925   ア...