シオドア・ドライサー『アメリカの悲劇』An American Tragedy 1925
Theodore Dreiser(1871-1945)
田中純訳 現代アメリカ小説全集 三笠書房 1940、 早川書房 1950、1954
大久保康雄訳 世界文学全集 第3期 第19 河出書房新社1958、 新潮文庫 1960、1978.9
橋本福夫訳 角川文庫 1963-68
宮本陽吉訳 現代アメリカ小説全集 集英社 1970、1975、1978
これはドライサーの自然主義小説の頂点といわれる。同時に集大成であり、作家は、『シスター・キャリー』1900『ジェニー・ゲルハート』1911と書き継いできたアメリカ社会との抗争の記録を完成した。同時代の他の作品と並べてみると、発表されたのがいささか遅きに失したような印象も与える。
一人の移民の青年とアメリカの夢との衝突。そこから起こった犯罪は、ドライサーが固有にいだいていた単独者の悲劇という物語を発酵させた。
主人公は時代の負け組だ。適者が生き残るなら、彼の生き延びる目はない。ドライサーが書き得たのは、負け組社会小説の原型といってもいい。この小説を書き換え、なぞっていくように、後続する「もう一つのアメリカの悲劇」は書き継がれていった。悲劇のみが映し取ることのできるアメリカ社会の本質だ。