エドワード・D・ホック「有蓋橋の謎」(サム・ホーソーンの事件簿)
The Problem of the Covered Bridge 1974.12
(The Problems of Dr. Sam Hawthorne 1996)
Edward D. Hoch(1930-2008)
木村二郎訳 創元推理文庫 2000.5
謎解きもの短編ミステリ作家には、ケメルマンやヤッフェのような寡作タイプがいるが、逆に、ダーレスやアシモフのように多作タイプもいる。
ホックはそのなかでも、作品の多さでは随一の書き手だ。短編専門といってもいい珍しい存在で、長編作品はごく少ない。怪盗ニックものを始め、シリーズ・キャラクターが多いのも特徴だ。すべてのキャラクター・リストを並べると、一ページをゆうにこえるのではないか。そのうちの選抜メンバーで構成したのが、日本編集版の『ホックと13人の仲間たち』1978(ハヤカワミステリ文庫)だ。
「有蓋橋の謎」で始まったサム・ホーソーンのシリーズは、不可能犯罪への挑戦というトーンで統一されている。
舞台は、一九二〇年代、さる田舎町。語りは、ホーソーン医師の回顧譚という形を取っている。歴史ミステリの体裁はアンクル・アブナーのシリーズを連想させるが、こちらはパズル解読が主になる。短い話に詰めこまれた不可能趣味のオン・パレードは壮観だ。
ホーソーン医師ものは、EQMMに掲載され、六十編を超えている。日本編集版の短編集『サム・ホーソーンの事件簿』(木村二郎訳 創元推理文庫)が二冊ある。