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2023-12-05

4-4 エドワード・D・ホック「有蓋橋の謎」

 エドワード・D・ホック「有蓋橋の謎」(サム・ホーソーンの事件簿)
The Problem of the Covered Bridge 1974.12
(The Problems of Dr. Sam Hawthorne 1996)
Edward D. Hoch(1930-2008)
木村二郎訳 創元推理文庫 2000.5



 謎解きもの短編ミステリ作家には、ケメルマンヤッフェのような寡作タイプがいるが、逆に、ダーレスアシモフのように多作タイプもいる。

 ホックはそのなかでも、作品の多さでは随一の書き手だ。短編専門といってもいい珍しい存在で、長編作品はごく少ない。怪盗ニックものを始め、シリーズ・キャラクターが多いのも特徴だ。すべてのキャラクター・リストを並べると、一ページをゆうにこえるのではないか。そのうちの選抜メンバーで構成したのが、日本編集版の『ホックと13人の仲間たち』1978(ハヤカワミステリ文庫)だ。

 「有蓋橋の謎」で始まったサム・ホーソーンのシリーズは、不可能犯罪への挑戦というトーンで統一されている。


舞台は、一九二〇年代、さる田舎町。語りは、ホーソーン医師の回顧譚という形を取っている。歴史ミステリの体裁はアンクル・アブナーのシリーズを連想させるが、こちらはパズル解読が主になる。短い話に詰めこまれた不可能趣味のオン・パレードは壮観だ。

 ホーソーン医師ものは、EQMMに掲載され、六十編を超えている。日本編集版の短編集『サム・ホーソーンの事件簿』(木村二郎訳 創元推理文庫)が二冊ある。

『アメリカを読むミステリ100冊』目次

イントロダクション 1 アメリカ小説の世紀  ――1920年代まで  1 偉大なアメリカ探偵の先駆け   ジャツク・フットレル『十三号独房の問題』1905   メルヴィル・D・ポースト『アンクル・アブナーの叡知』1918   シオドア・ドライサー『アメリカの悲劇』1925   ア...